はじまりのかたち +素描+

 素描は、美術を学ぶ学生の最初のハードルであり、また様々なフィールドで活躍する作家たちが制作をする際に、多かれ少なかれはじめに取り組むステップです。このような、"素描こそは造形活動の第一歩"という考え方からMOU尾道市立大学美術館では二年に一度、学生の様々な素描作品を展示する「素描展 はじまりのかたち」を開催してきました。
 この春は特別編として、造形作家やデザイナーとして活躍する教員の素描を、学生の作品とあわせて広く展示します。また、石膏デッサンや写生デッサン、下図といった従来の素描展での内容に加え、準備段階のスケッチや構想メモ、アイデアノートや写真によるメモ、作業途中の修正指示をも幅広く「素描」としてとらえなおして展示します。
 レオナルド・ダ・ヴィンチが、膨大な手稿のなかのデッサンから、絵画を完成させるよりもむしろ自然科学的な発見や発明を生み出したように、「素描」の役割は、芸術家の訓練や作品の下準備にとどまるわけではありません。ポール・ヴァレリーがドガの、あるいはまたロラン・バルトがサイ・トゥオンブリの素描から哲学的エッセイを展開するように、「素描」は、言葉だけでは到達できない次元へと思考を媒介することもあります。私たちが世界を前にして考え、コミュニケーションをとり、行動する過程で「手」で「かたち」をかたどることは思っている以上に重要性を持つのではないでしょうか。造形面だけでなく、認知や思考における「素描」の機能を、あらためて視覚的に振り返るという新たな試みをぜひご高覧ください。


2019年3月2日(土)-  5月6日(月・祝)
水・木曜日休館/祝日の場合、開館
10:00 - 18:00


MOU 尾道市立大学美術館 / Museum of Onomichi City University
広島県尾道市久保 3-4-11