アーシュラ・K・ル=グウィン / Ursula K. Le Guin「夜の言葉 / The Language of The Night」

 すぐれたファンタジーや神話や昔話は実際夢に似ています。それは無意識から無意識に向かって、無意識の言語 ― 象徴と元型によって語られます。言葉そのものは使われても、その働きは音楽のようなものです。つまり字義を追い、論理的に組み立てて意味をとらえる過程をすっとばし、あまりに深く潜んでいるので言葉にされることのないような考えに一足とびに到達するのです。こうした物語は理性の言語に翻訳し尽くすことはできませんが、論理的実証主義者でベートーヴェンの第九交響曲を無意味だと思うような人でもなければ、だからこの物語には意味がないとは言いはしないでしょう。こうした物語は深い意味に満ちていますし、利用価値も高い ― 実用的とさえ言えるのです。倫理という点で、洞察という点で、人間的成長という点で。  -  アーシュラ・K・ル=グウィン / Ursula K. Le Guin