アーシュラ・K・ル=グウィン / Ursula K. Le Guin「夜の言葉 / The Language of The Night」

 "イマジネーション" と言うとき、わたしが言っているのは、知的感覚的な精神の自由なあそび(フリー・プレイ)のことです。あそび(プレイ)とはリクリエーション=再創造(リ・クリエーション)、つまり既知のものを組み合わせて新たなものを作り出すこと。自由(フリー)とは、それが目先の利益に執着しない自発的な行為であることを指します。だからといってしかし、これはその自由なあそび(フリー・プレイ)が目的を欠いているということではありません。むしろ、なにを目指すかはとても大切な問題です。子供のやる "ごっこ遊び" は明らかに大人の情緒や行動の手習いとなるものです。あそびを知らぬ子供は大人にもなれません。他方、大人の心の自由なあそびの産物が、『戦争と平和』だったり相対性理論だったりするのです。
  つまるところ、自由は野放しとはちがいます。イマジネーションの鍛錬は科学にとっても芸術にとっても不可欠な技巧であり、方法であります。われわれのピューリタニズムでは鍛錬といえば抑圧と懲罰だったりするから話がややこしくなるのですが、なにかを鍛えるとは、正しくは、抑えつけることではなくて、それを熟達させること ― 桃の木たると人の心たるとを問わず、その成長を促し、活動を、結実を促すことなのです。  -  アーシュラ・K・ル=グウィン / Ursula K. Le Guin